第一章

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カツカツと靴音が響く中、すれ違う人達が男に会釈するのを横目に男は酷く焦っていた。 たどり着いた重厚な扉の取手を掴むと、 遠慮なく開け放つ。 日頃では思いもしないその行動に、側に控えていた執事が瞳を見開いていた。 「父上、母上!!...ご無事でしたか」 「何事だい?アルバート」 「あらあら、貴方がそんなに焦るなんて、何かあったのかしら?」 突然の息子の帰宅に驚きながらも、お茶をしていた二人は快く出迎えた。 テーブルを挟んで向い合って座っている二人に異常は見られず、アルバートはホッと一息つくことができた。 「いえ、こちらから魔力を感じたものですから」 のほほんとした雰囲気を醸しだす二人に、アルバートは苦笑いしながら答える。 が、次いではっとしたように何かに気付くと再び焦りを見せた。 「シェリーは?」 「あら、そう言えば今日は一度も見てないわね」 母のその言葉を聞くと、アルバートは再び急ぎ足でその部屋へと向かう。 尋常じゃない息子の態度に、流石に二人も不安を覚えたのか、彼の後を追うように部屋を後にした。 階段を上がり、真っ直ぐその部屋へと続く廊下を走り抜け、アルバートは扉に手を掛けた。 「シェリー?」 恐る恐るアルバートが声を掛けるも、何の応答も得られない。 普段の彼女の気性からして、誰であろうと勝手に部屋に入る事を嫌っていた。 掃除をしようとしたメイドをきつく叱責したのは記憶に新しい。 それでも、アルバートはゆっくりドアノブを押した。 何故なら、確かにこの部屋から魔力の残照を感じたから。
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