slaver

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「でも、今の私たちがあるのは、そのお父さんのお蔭でしょ」 「それは……そういう解釈のしかたもあるけど……」 ここで七美が言ったのは、一般的によく両親が生んでくれたから、今の自分がある。みたいな意味ではない。 私の幼い頃の父の記憶といえば、いつも怒った顔で、何をしても厳しく口を出された恐怖の思い出ばかりだ。 ときには、母に手を上げることもあった父。ワタシには七歳上の兄もいるけど、歳が離れているせいで、ワタシが小学校低学年の頃には高校の寮に入ったこともあって、兄とは盆と正月くらいにしか会えなかった。 兄は優しかったけど、幼い頃からの刷り込みによって、ワタシにとっての男性のイメージは、父から受けた恐怖のみとなったのである。 中学から大学までエスカレーター式の女子校で寮生活をしたこともあり、他の男性とあまり接しなかったこともあってか、ずっと男性に対しての恐怖心は消えず、逆に女性に対して恋愛感情を抱くようになってしまった。 つまり、ワタシがレズビアンになったのは父のお蔭で、ワタシがレズビアンになったから、七美は今ワタシと付き合えて幸せなのだという意味でそう言ったのだ。
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