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「どう?」
心配そうに顔を覗きこむ香子姉に美味しいって言わなきゃと思った。
あたしのために一生懸命考えて作ってくれたんだから。
でも、良くも悪くも馬鹿正直なあたしは感想がそのまま顔に出ているらしい。
「ダメ、か……」
がっくり肩を落とす姿に必死に首を振ったけど、口の中のケーキをなかなか飲み込めなくて、カフェオレをがぶ飲みしてしまった。
アールグレイとシナモンの香りがしっかりするのに、それを真上から押さえつけてニンジンの青臭さが鼻を抜ける。
ホントにあんたはどこまで自己主張が強いのよ!!
だいっきらいなニンジンを心の中で思いきり毒づきながら香子姉の腕をとった。
「ごめっーーー」
あたしの必死の謝罪は、全部発せられることはなく、香子姉があたしの手を強く引く。
「謝らないで」
あっという間にあたしを腕の中に閉じ込めて優しく頭を撫でてくれる。
「みゆ、明日から大丈夫? 何か心配で仕方ない」
優しい声が耳にするりと流れ込む。
すぐそばで感じる香子姉の息遣い、匂い、全てが愛しくて蕩けそうになる。
「だったら、あたしのそばにいて。
香子姉、あたしのそばにずっといてよ」
無茶苦茶なお願いは、絶対に叶えられないってお互いに分かってる。
それでも自然に口から零れ出ていた。
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