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ゴクン……。
あたしがニンジンを飲み込んだ音は香子姉の耳にも届いたらしい。
「みゆ……。食べたの?」
「うん。食べれたよ、ニンジン」
ケーキよりずっと苦手な臭いは強かったはずだけど、鼻からいっぱい吸い込んだ香子姉の香りがそれを押さえつけてくれた。
「甘くて美味しかった」
「はっ……。ケーキを食べれなかったくせに。でも偉い偉い」
香子姉は笑いながらしがみついたままのあたしの背中をよしよしと擦ってくれた。
「これで明日から1人で頑張れる?」
「うん……」
「少しずつでいいから、ニンジン克服しろよ?
これからは親父さんが魂込めて作るんだからね?」
「うん……」
「みゆ、……頑張れ」
「うん……」
香子姉に抱きついたまま何度も頷いた。
あたしの頭に香子姉の頬が触れる。
香子姉が、初めて泣いていた。
あたしも、いっぱい泣いた。
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