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「高校を卒業したら、ここに戻っておいで」
長い時間をかけて漸く泣き止んだあたしをさらに抱き締めながら香子姉が言った。
「私ももっと強くなって、大人になって待ってるから。
だから、みゆももっともっと成長して戻っておいで?」
「香子姉……」
顔を上げたら、すっかりいつも通りの優しい笑顔がそこにあった。
あたしが好きで好きで堪らなかった香子姉の笑顔。
香子姉、あたしはあなたを好きなままでいいんだね?
「絶対に帰ってくるね、ここに」
「待ってるよ」
香子姉はオレンジの花をもうひとつつまみ上げて悪戯に微笑む。
「約束の証だ。
もう一個、食べとく?」
端っこだけをくわえてニッと笑った香子姉の唇に、あたしは目を閉じてそっと顔を寄せた。
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