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なびく風が頬を撫でる秋。
この桜ヶ丘女子高にも、恋愛の秋がやってくる。
「今日こそは…この手紙を先輩に……」
由良子は、徹夜で書き上げた手紙を握りしめ、校門前で先輩を待つ。
〝受け取ってもらえるだろうか…〟
不安ばかりが募る。
この瞬間が地獄であり、一番緊張する時だ。
「はぁ…まだかな…」
切ない気持ちが鼓動を高鳴らせ、迷いと期待が心の中で混ざり合う。
「お疲れっ。」
「夏目先輩っ!お疲れ様です。」
〝きたっ!!〟
鼓動はさらに高まり、ピークに達する。
夏目が走る足音より早く、鼓動は速度を落とすことを知らない。
〝言わなきゃ!言わなきゃ!!〟
その言葉だけが脳裏をぐるぐると回り、言葉が中々口からでない。
「いけない!バイトに遅刻する!」
「先輩!こっこれ…読んでください!」
そう声に出せた時には、夏目が走り去った後…
その声は虚しく響き渡り、外野の微笑とざわつきが由良子を辱める。
「やだぁ…あの子夏目先輩にラブレター渡そうとしてる」
「受け取ってもらえるわけ無いのに…馬鹿ねぇ…」
「よしなって…聞こえてるよ。」
由良子の瞳から一筋の雫がこぼれ落ち、その場にいられない雰囲気から自然と体が動き、校門を走り去る。
「うわぁぁぁん…。」
〝そうだよ!私なんかが夏目先輩となんて…〟
砕け散る気持ちが涙として零れ落ちるかの様に、思考はドンドンネガティブな方向へと向かっていく。
〝もう…先輩には顔を見せられない…〟
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