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「こんちくしょー!」
女子トイレの化粧スペースから、この会社に相応しくない声が聞こえたのは突然だった。
本当は覗いちゃダメなんだけど、あんまりにも本当にこんちくしょうという感情が込められていたので顔をおずおずと覗かせた。
何か言われたら、喧嘩かと思ったとかそんなことを言えばいいだろう。
白いシャツに黒のタイトスカートの女性は、パンツが見えそうな立派な投球ホームで、ティッシュをゴミ箱に投げ入れようとしていた。
空気抵抗があるから、もっとそっと投げないと入らないと思う。
心で冷静なアドバイスを送るが、声には出さない。
なんか、面倒臭そうじゃない? この女の人。
「くっ」
彼女は違うティッシュで鼻をかむと、何故かそれは普通にゴミ箱に入れた。
なんなんだ、この人。
そして僕の存在に気がついた彼女は、一瞬身体をビクつかせたものの、めげずに同じ行為を始めた。
願掛けでもしているんだろうか。
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