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「すいません。ご迷惑お掛けしました」  やっとゴールしたティッシュを満足げに見下ろした彼女は、律儀にも僕にお礼を言って立ち去った。  ここでは見たことない顔だったな。  そして中々の美人だった。  氷の女王みたいな冷たさの瞳の中に、こんちくしょーと言える情熱。  僕は女嫌いだけど、男が好きな訳じゃない。  人間的に好きになれれば性別なんか大丈夫、だと思う。  今年十九歳。  初恋もまだな僕にとって、トイレの彼女との出会いはある意味衝撃的なものとなった。  あとから聞いた話だと、彼女は斑目社長の奥さんだった。  あのいつもふわふわして仕事もしてなさそうな社長の。  と言うのは僕の感想で、実はかなりのやり手社長らしい。  大口の取引は全て社長が取ってくるらしい。  らしいらしいと言うのは、清掃の時に社員の噂話を聞いただけだから。  普通に考えて社長と清掃員の僕が話せる訳ないでしょ。  彼女はまた、このビルに来ることがあるだろうか。
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