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ビルは二階まで解放され、三階へ行く階段はロープで封鎖されている。
これなら越野さんと二人で何とかなりそうだ。
あまり広い範囲だと手が回らない。
一階のエントランスには人が溢れかえっていたけれど、二階の会場からマイクが聞こえると引けていく。
僕はその波に逆らって、エントランスの隅にある紙くずを拾い上げた。
携帯しているごみ袋に入れると、夜の空の色をしたドレスを身に付けた彼女を見つけた。
斑目社長の奥さん。
なんでこんなところに居るんだろうと見ていたら、彼女は視線を感じて僕を振り返る。
「あなた……。マーブルにいたよね?」
「は、はい」
「ちょっとこっちに来て」
「え?」
「こっちこっち」
手招きされるがまま近付き横に立つ。
彼女は僕の両手を広げたくらいの大きさの絵を見上げる。
黄色だった。
といっても一色じゃなくて、色々な黄色が横波を作り、グラデーションになっている。
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