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「何に見える?」  奥さんの唐突な質問に、これは何かの試練なのかと思った。  美的感覚のない人間はマーブルに出入りするなとか言われんのかな。  無い頭を絞っても適当な答えが見つからず、僕は答えられなかった。  そんな様子を見ていた彼女は、腰に両手を当て仁王立ち。  僕が何か言うまでそこを動きそうになかった。 「これはね、鼻くそよ」 「は?」 「はなくそよ。あっちにあるのが、目ヤニ」  彼女が示した指先の向こうに紫色の絵がある。  それから赤、黒、緑をそれぞれ指差し、瘡蓋、うんこ、鼻水という。  僕には何のことやらわからない。  絵の下には違う題名が書いてあるし。 「奇特にもここの社長はこれらを各階に飾るんだって。馬鹿よね。うんこを自分の社長室に選んでいたわ」  うんこって……。  聞いてるこっちが恥ずかしい。
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