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「ヤカンで入れた麦茶って何なのよ?」
壁に手を付き、ヒーヒー言いながら笑っている京壱の背中を摩る。
久しぶりに彼の背中に触れた指は、熱を持った。
「美味いんだよ。今度作って飲んでみろ」
「そんな面倒なことしないわ。買った方が早いもの」
「そうだった。結城はそういう人間だった」
ひとしきり笑い終えた京壱は、修子ではなく私のことを結城と呼んだ。
そこに大きな壁が出来たのを意識させられる。
「それにしてもよくもまぁ結婚だなんて。しかも『あの』芹沢世理と」
「そうだなぁ。我ながらよく結婚したと思うよ。でも気の迷いではないことは、確かだ」
「町田君、祟って出てくるかもよ」
私が両手を幽霊の様にすると、京壱は目を伏せ寂しそうに笑う。
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