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「そうなったら、酒でも飲んで許しを請うさ」
許しを請うても町田君は芹沢世理を離さない。
きっと彼女が離れられない。
京壱だって、あの家で見た完成された絵画を見て感じたでしょう?
「ま、許されなかったら私のとこに来てもいいわよ」
「各務がいるだろ。それに世理が最後だから結城のとこには行かないよ」
冗談で流してくれても良かったのに、京壱は馬鹿正直に決別を口にした。
京壱は私が知る限り、女性にはっきりと別れを言うことはなかった。
というか、京壱はいつも別れを告げられる側だった。
「ただいま戻りました……」
すっかり意気消沈した芹沢世理がトイレから戻り、二人は五階へと消えていく。
私はぐるりと首を回してから、仕事に戻る。
今日も今日とて大忙しだ。
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