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 今でも思い出しては身体が疼く。  京壱の二の腕に爪を立てて、足を絡めたい。  今なら、大人になった今なら彼の愛に応えられるんじゃないかと感じることもあったけどそれは自惚れで、私は二度挫折している。  明彦と別れて京壱の胸で眠り、また明彦へと帰る。  京壱はやっぱり何も聞かずに受け入れてくれていたけど、それもどうやら終わりみたいだった。  よりによって、あの芹沢世理と。  町田君が死ぬほど愛した、あの芹沢世理と。  当時の私は芹沢世理の名前は知っていたものの、顔は知らなかった。  私が知っていたのは、国内の絵画展の賞を嵐の様に総なめにしていたことと、町田君の地元に居る彼女という事だけだった。  みんなに会わせろと催促されても、もったいないからダメと言って、はにかんでいたのを覚えている。  お互いに刺激し合う仲で、最高の同志だとも言っていたっけ。  町田君は線が細く病弱そうに見えても、平気で三日三晩寝ずに絵を描く。  そのかわり一週間寝込んだりもしていた。  大学の一角の壁には、町田君が描いた壁画が残っている。  これを描いていた町田君の姿は鬼気迫るものがあり、私は感動すら覚えた。  だから今の仕事に就いている訳なんだけど。
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