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「くあーっ」
椅子に座ったまま両腕を伸ばして、身体に溜まったモヤモヤを吐き出す。
思い出したくない過去を遡った私の頭は、熱くなっていた。
「結城さん、社長お帰りになるってー」
フロアを仕切るパーティションから同僚が顔を覗かせる。
「手が離せないから、すいませんって言っといてー」
「りょうかーい」
なんであんな意地悪なこと言ったんだろ、私。
今さら嫉妬なんて、私らしくもない。
芹沢世理もきっと逃げ出す。
京壱は私の所へ帰ってくる。必ず。
耳障りな着信音を振り撒く携帯を一睨みし手に取る。
「もしもし? 明彦? 各務社長今日は会社に居るの? あぁそう。ご所望の芹沢先生のマーブルで扱ことになったから。え? うん、そう。中田さん通してそっちに行くから。よろしくね」
壱枚百万円以上也。
五枚お買い上げ、ありがとう様。
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