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【キャラ別小話】
日が落ちる黄昏の時間、人々が行き交う平日の大通りは学校帰りの学生や、疲れた表情を浮かべながら足早に帰宅するサラリーマン達で溢れかえっている。
信号待ちの間、愛車の窓から見えるその光景を眺めながら今日一日の終わりを実感した。
実に数週間ぶりの休日らしい休日だったが、今日が終わればまた明日からは少年少女達の非行防止に取り組む日々に戻るのだ。そう思うと今交差点を渡る学生達に自然と視線が移動するが、今日はまだ貴重な休日なのだと直ぐに頭を振る。
「仕事病ってやつか……」
自嘲気味に呟きながら、赤から青へ変わった指示器に従いアクセルに乗せた足にゆっくりと力を入れた。
愛車はエンジン音を響かせながら走り出す。
再び流れ始める景色の中、ふと視界の隅に赤色を見付けた。
人混みの中7、8歳程の少女が自分の身長の半分はある赤いキャリーケースを押して歩いており、そのキャリーケースの赤色が視界に入ったのだろうが、何故か晃一郎は車内からその少女の姿を目で追っていた。
数秒もしない内に流れる景色と同じように少女もその姿を消したが、不思議とキャリーケースの赤色は脳裏に焼き付いており、自宅に帰宅してもその色は消えなかった。
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