第1章

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 久々に旧友から電話が来た。そこで最近の悩みというか 気になる事を相談してみた。他愛もない可愛い電話内容。  私「今度、猫を飼うことになりましてね。」  友「どのような猫ですか?」  私「トラ縞のある薄茶の色なので、トラ猫と名付けようかと。」  友「ふむ。強そうですな。しかし虎は龍には負ける言います。」  私「そうですか。では、龍猫と名付けた方がいいでしょうか。」  友「いや、少しお待ちを。確か龍は雲に乗って天を舞うとか。」  私「はぁ。では龍をも運ぶ雲猫ならば、大吉となりますか。」  友「それも、違います。雲は大きくとも風吹けば散るもの。」  私「であれば、風猫などが良さそうですな。素早そうだ。」  友「但し風猫は頂けない。風は頑強な壁を倒せないのです。」  私「なるほど。では壁猫であれば、頑丈で頼もしいかと。」  友「そう思ったのですが、壁はネズミに齧られ穴を許す。」  私「難しいものですね。ネズミ猫と名付けるのは奇妙ですが。」  友「ええ、奇妙なのです。ネズミは猫に捕まるからです。」  私「ああ、じゃあ猫は単に猫であるのがよいのですね。」  友「それが懸命かと思うのです。」  私「合点が行きました。ありがとう。ではごきげんよう。」  友「今度は遊びに参りましょう。猫殿に御挨拶がてら。」  私「是非、いらしてください。」  友「では、ごきげんよう。」  名前を付ける行為は思い巡らすと、かくも難解な設定を、 前提にしてから試行錯誤しなくては行けない。 私は良き友と、良き猫に恵まれて幸いである。
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