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「菜帆子(ナホコ)。見て、これ。可愛いと思わない?」
昼休みの教室。
友人の千鶴(チヅル)が、嬉しそうに私の席にやって来て、ファッション雑誌を開く。
白い指で、とある記事を指し示した。
ターコイズのヘアアクセサリーが載っている。
「…へえ。いいわね。綺麗…」
「でしょ?きっと菜帆子に似合うよ。ねー、お揃いで買わない?」
「お揃い…?」
「そ。一緒につけようー」
「……」
無邪気に笑いながら、私の返答を待つ千鶴。
肩を流れるサラサラの長い髪。
時おりチラリと覗く、耳たぶを飾るエメラルドのピアス。
薄い唇を彩るのは、リンゴの香りのグロスだ。
…その全てが私と一緒。
顔こそ違うものの、私たちの格好はいつも似ている。
千鶴が、…私とお揃いにしたがるから。
「…菜帆子?」
「え?」
「どうしたの、黙っちゃって。お揃い…だめ?」
「…ううん。いいわよ…」
そう答えると、千鶴の顔がパッと輝いた。
「良かったー。じゃあ、決まりね!今度、買いにいこうよー」
「わかったわ…」
私が頷いたのを確認して、千鶴は自分の席へと戻っていく。
そのたおやかな後ろ姿をただ見つめた。
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