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「…なに、あれ? 菜帆子、嫌じゃないの?」
千鶴がいなくなってから、入れ替わるように他のクラスメイト達が数人、私のそばにやってくる。
眉をひそめ、嘲笑するみたいに口元を歪めていた。
「…嫌…って何が?」
「千鶴よ。あの子、いつも菜帆子にベッタリで、何でもかんでも真似してさ。…うざくない?」
「……」
「金魚のふんみたい」
「……」
明らかに千鶴を蔑んだ言葉。
私はそれには答えず、机の中から教科書を取りだし、次の授業の用意を始める。
「菜帆子?」
「ねえ、聞いてる?菜帆子」
不満げに話しかけてくるクラスメイト達。
でも私がにらむように一瞥すると、揃って押し黙った。
「…うるさいな。
別に。嫌じゃないし、金魚がどうとか意味わからない」
「…っ…。あ、そ…」
白けたような顔をして、彼女達は席から去っていく。
「…なに、あれ。親切で言ってあげてんのに」
「菜帆子、美人だからって、調子のってるとこあるよねー」
そんな囁き声が聞こえてきて、思わずため息をついてしまった。
…女の子は面倒くさい。
すぐに群れて、他人を貶め、同調を求めて…
馴染めない。
私も女なのに。
(…千鶴…)
千鶴の席を見ると、誰と群れるわけでもなく、一人で本を読んでいた。
その姿は、気高く、美しく見える。
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