オチタ林檎

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――放課後。 私と千鶴は教室に残り、雑談をしていた。 これは私たちの日課。 誰もいない教室で、とりとめのないことを話す。 くすくすと軽やかな笑い声が、壁や床を転がるように響き… 私の胸は甘くくすぶる。 「ね。菜帆子。また、髪をなおして…」 ふいに、千鶴がそう言って、自分の髪をサラリとすいた。 このおねだりも、いつものこと。 私の真似をしてお揃いのロングヘアーにしている千鶴だけど、手入れは得意ではないらしく、放課後には少し髪が乱れていたりする。 だから毎日、私が整えてあげているのだ。 「…仕方ないな。いつか自分で出来るようになりなよ」 「ありがとう。菜帆子、大好き!」 「はいはい…」 椅子に座る千鶴の背後に立ち、鞄から愛用のくしを取り出した。 私がいつも使っているもの。 自分の髪をとかした くしで、千鶴の髪を同じようにとかしていく。 それだけのことなのに優越感を覚えた。 細く、柔らかい千鶴の髪。 私の指先をくすぐすように、サラサラと流れて落ちていく。 目線をあげると、千鶴の白いうなじが見える。 …とても綺麗だった。
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