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「いいんです。行って何も無いなら無いで。
とりあえず行ったっていう証拠が欲しいから写真だけ撮りに行くようなもんだし。なっ、秀介!」
「えっ、あぁ……そうだな」
手描きのメニューをジッと見つめていた秀介が適当に返事をする。
「まぁ、若い子に行くなと言っても逆に興味を持つだけだね。
落崖村の話は、聞かなかった事にするよ。で、何にするんだい?」
俺達からオーダーを聞いたお婆さんは白髪をゴムで結びながら厨房へ引っ込み、数分経ってから出来立ての料理を運んできた。
腹が減っていた俺達は飲み込むように食事を終え、会計を済ましてバス停へ向かう。
「なぁ克人、あのお婆さんさ、俺らが落崖村に行くって行った時、何であんな怖い顔したんだろうな」
「未成年だからじゃないかな。まぁ、孫を心配する気持ちみたいなんじゃないの?」
笑いながらそう言った俺は、バス停の近くにある石段に腰を下ろす。
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