第一夜:克人と秀介

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――――どれだけ歩いただろうか。 既に空は赤く染まり、カラスの声が不気味に響いていた。 正直、こんな場所に来なければ良かったなんて台詞、言い出しっぺの俺が言うわけにはいかない。 俺は筋肉痛で震える足を軽く叩きながら、森の中をさ迷っていた。 明らかに口数が減っている後方の秀介に俺は積極的に話しかけようとするが、話題が見つからない。 小学校時代からの親友だとは言え、疲れがピークに達すると軽快なトークは消え失せてしまうことを、この日初めて知った。 地図に書かれた東西南北の印を見ながら進めていた歩を止める。 「そうだ!」 コンパスのアプリをダウンロードしようと思い、久しぶりにスマートフォンを取り出すと、圏外になっていることに気づく。
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