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秀介は「お邪魔します」と言って崩れた玄関を飛び越えて一軒の家に侵入する。
足を地上についた瞬間、「痛え!」という声と共に蹲る秀介。
慌てて俺が駆け寄ると、秀介の足首から血が出ている事に気づいた。
「何があった?」
俺はカバンの中からハンカチを出して秀介に手渡す。
「解らない……。なんか急に痛みが走ってさ、足首見たら血が出てた。
たぶん、蛇とかじゃないかな」
そう言って秀介はゆっくり立ち上がり民家の中を歩き出す。
「蛇だったらヤバくないか?毒とか持ってたらさ……」
「大丈夫、毒を持ってるならもっと痺れてるよ。昔、マムシに噛まれた事あるからわかるんだ」
そう言いながら秀介が畳の剥がれた和室に入った時、一体の市松人形が目に入る。
その市松人形は、右側だけ毟られたように髪の毛が無く、目も左目だけ刳り貫かれ、右足ももぎ取られたように存在していない。
ボロボロの着物からチラつく腹部には大きな十字傷まである。
明らかに故意に傷つけられた人形を不気味に思った秀介は、勢い良くその人形を蹴り飛ばす。
「気持ち悪い人形セットしやがって!
こんなもん、絶対肝試しとかに来た奴らがワザと置いて帰ったんだぜ!」
市松人形は壁に当たって首が取れ、コロコロと秀介の足元まで転がって返ってくる。
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