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むしろ、さやかに堂々と抱きつけるチャンスだった。
あ、でもどうしよう。キスなんてしちゃって、嫌われたかも。
「さやか。あのね、今のはっ……」
「ましろ? 私の『大好き』に応えてくれたの?」
「えっ?」
「さっき告白したのよ、私。『あなたが、大好き』って」
「だい、すき?」
あ……心臓をぎゅっと掴まれるって、こんな感じなの?
見たこともない艶めいた笑みを浮かべながら、さやかが囁く。
「ね、もう一度キスして? ましろ」
黒灰色の瞳を潤ませて、ほんのり色づいた頬が近づいてくる。抗えない。薄桃色の唇に吸い寄せられるように、私のそれを重ねた。
「……っ、好き。さやかが、好きなのっ」
キスの合間、唇を触れ合わせたまま告げる。熱い吐息を零したさやかが私の腰をぐっと引き寄せ、互いの密着度が増した。
何度も、角度を変えては重ねられる熱の甘さ。ぷるんとした唇の感触と、熱い吐息。互いの身体に回した手に込めた、求め合う想いの強さに頭が痺れてくる。
あぁ。欲しかったのは、これだったんだ。私がずっと探してたのは、さやかだった。
良かった。私、ちゃんと見つけられた。
もう、離れない。この熱とは、離れられない。ずっとずっと、一緒にいようね?
私のさやか。大好きっ!
❇︎❇︎❇︎
——あぁ。可愛い可愛い、私のましろ。ようやく、私のところに堕ちてきてくれた。
あの日、私のために痴漢を投げ飛ばしてくれた、あなた。あの日からずっと、仄暗い想いをあなたに抱いてきたわ。
ごめんね? 優しいあなたを傷つけるような噂を、幾つも流して。無防備なあなたを、見た目で判断する軽薄な男子たちから守りたかっただけなの。
ねぇ? 真っ白な真っ白な、とても綺麗な、私のましろ。
私だけの、キラキラ輝く純白の蝶々。ずっとずっと、一緒にいましょうね。
決して離さない。あなたは、ずーっと、私だけのものだから——。
ーFinー
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