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「やっぱもう帰るっ」
急にもう聞いてられないような気がして、思い切り起き上がった。
ベッドに腰掛けたままの渡瀬が唖然としてる間に鞄を掴んで、部屋を飛び出そうと思った。
「壱っ!」
焦って飛び起きた渡瀬に、ドアにたどり着く前に後ろから抱きしめられる。
「...ちょっ、渡瀬、離せ」
そう言えば更に籠められる力に肩が強張る。
「...ごめん、もうあんな事しねーから。ちゃんと言うから。俺から逃げねーで」
俺を抱きしめたまま、俺の肩に顔を埋めたままそう言う渡瀬の声は今までとは別人みたいで。
今までで一番苦しそうで、悲しそうで、振り払うなんて出来なかった。
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