夏桃の氷菓

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「違う! あんたのそういうとこ可愛いけど、先に言っとく。ごめんね?」  と、千代の顏が一瞬で近づいてきて、店内が、ざわっ、と騒いだ気がした。 柔らかくて、生クリームの甘い味がした、と思う。 つまり私、初めてのキスをしたようで。 千代と。 「あはっ、浮気したらぶっ殺すから」  照れ隠しか、ちょっと酷いけれど嬉しい告白返しに私も笑ってしまった。 でも店内にいた人達はまだ私達を見ていて。 「もっかい、する?」  千代が聞いてきた。 「え、でも」 「ほっとけばいいじゃん。したくないの?」 「し、したい。でも、皆何か言ってるし」 「言わせておけばいいじゃん。つーか見せつけてやろーよ、あっちの席でもさっきやってたしさ」  恋人同士の席の人達の事のようで、私は少し考えてから、答えた。 「……うん」  私はまた千代とキスをした。 これから何回するかわからない、二回目の素敵なキスを。 けれど千代、キスしながら中指立てた手も皆に見せてるって、どうかと思うよ? と、こっそり見てしまった私は、幸せ、に溶けるのだった。
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