夏桃の氷菓

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「……中学の時も、高校の時も、千代に彼氏がいた時も、別れた時も、遊んでる時も」  千代はアイス珈琲のストローから口を離して私を見た。 「ずっと、ずっと、今も」  想いの長さと。 「友達でいたかったけれど、いたままでもよかったけれど、どんどん大人になってきて……私も、女だから」  欲の深さと。 「……愛してんの。千代の事」  好きの重さを千代に告げた。 スプーンでつつきすぎて、白桃色のアイスクリームが皿に、ゆるり、と溶けている。 私は、かちゃん、とスプーンを皿に置いた。  千代は私を見ている。 驚いていて、目が真ん丸になっていて、初めて知ったみたいな顏をしていて。  そうだよね、私、嘘、上手いから。 「び……びびった。ってか……え? あんたって、そうなの? 今まで彼氏いなかったのも、それが」 「そうだよ」  私は男の人を愛せない。 「す……好きな人がいるって」 「そうだよ」  私は千代を愛してる。 だから。 「この前ね……私、男の人に抱かれてみたの。思い込んでるだけなんじゃないかって。ずっと知りたかったから。感想、聞く?」  千代はぴくりとも動かない。  男の人は、固くて、強くて、痛くて。 「……違った。それだけ」
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