夏桃の氷菓

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 私は煙草に火を点ける。 嗅ぎ慣れた匂いが、鬱陶しかった。 「千代……ごめんね?」  私は謝った。 何故か、でも、そんな気がして。  千代は私をずっと見ていた。 開いていた口は閉じていて、アイス珈琲の氷が、からん、と溶けていくのもお構いなしに。 「……あんたさ」  千代が喋った。 「何してんの? 何、試すような事してんの? 何で……っ」  千代は窓の方を見て、私から顏を反らした。  何で千代が泣いてるの? 「馬鹿。こっち見んな」  そう言われても気になる。 「……ごめん」 「謝んな。馬鹿」  とりあえず私は煙草を吸い終わるまで待つ事にした。 今、千代に何か言っても跳ね返されるだけだし。 喫茶店内は結構人がいて、騒がしい。 大学の近くなだけあって、見た顏もちらほらある。 普通の女同士で来ている人もいれば、恋人同士で来ている人もいる。 友達でも、多分女は男が好きなのかも、って席もあって。 私と千代は、どれでもない。
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