夏桃の氷菓

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 私は短くなった煙草を灰皿に押し消した。  「……気持ち悪いよね。私」  眉を顰めながら千代が私を見た。 「ただ、言いたかったんだ。だから」  ああ、私まで泣きそう。 「……嫌いにならないで」  額に手をついて、私は俯いた。  泣いたら駄目だ。 泣き顔なんか、見せたら駄目だ。 でももう、駄目かも。 もう、千代とこんな風に出かけたり、遊んだり、出来なくなるかも。 言うんじゃなかったかも。 今まで通り、嘘をついていればよかったかも。  そればっかりが頭の中を巡っていて。 「あーーん」  ……んぅ?  千代は注文した生クリームたっぷりのパンケーキをフォークに刺して、私に向けていた。 一口には大きすぎるのでは、と思ったけれど、千代のきつい目つきに逆らえずに食べた。 口の中いっぱいに、もごもご。 「そのまま聞いて。喋んないでよ」  喋れません。 「あんた、やっぱ馬鹿だわ。嘘も下手くそ。かっこつけんな。バーカ」  喋れないのが、むかつく。
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