35人が本棚に入れています
本棚に追加
私は短くなった煙草を灰皿に押し消した。
「……気持ち悪いよね。私」
眉を顰めながら千代が私を見た。
「ただ、言いたかったんだ。だから」
ああ、私まで泣きそう。
「……嫌いにならないで」
額に手をついて、私は俯いた。
泣いたら駄目だ。
泣き顔なんか、見せたら駄目だ。
でももう、駄目かも。
もう、千代とこんな風に出かけたり、遊んだり、出来なくなるかも。
言うんじゃなかったかも。
今まで通り、嘘をついていればよかったかも。
そればっかりが頭の中を巡っていて。
「あーーん」
……んぅ?
千代は注文した生クリームたっぷりのパンケーキをフォークに刺して、私に向けていた。
一口には大きすぎるのでは、と思ったけれど、千代のきつい目つきに逆らえずに食べた。
口の中いっぱいに、もごもご。
「そのまま聞いて。喋んないでよ」
喋れません。
「あんた、やっぱ馬鹿だわ。嘘も下手くそ。かっこつけんな。バーカ」
喋れないのが、むかつく。
最初のコメントを投稿しよう!