囀る小鳥は毒を知らない

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だけどあの時、気付いたの。 私は女でありながら、女である彼女の事を、愛しているんだって。 「実はね、同じクラスの男の子に告白されて……」 この時のお餅も、淡いピンク色だった。 彼女は本物の「ことり」のように、美しい声を持っていた。 更には華奢で女らしい身体、柔らかくも整った顔立ちも相俟って、それはもう男たちからは人気があった。 けれどまさか、こんなにも早く、こんなにも簡単に私の元から飛び立っていってしまうなんて 想像もしてなかったんだ。 「そっか、付き合うのね?」 「……うん」 「応援してるよ、ことり」 「……ッ!」 彼女は「親友」である私にそう言ってもらえた事が、よほど嬉しかったのだろう。 笑って、けれど泣きながら、私に抱きついてきた。 「ありがとう、あずちゃん。大好き!」 ――この時、私がどれだけ苦しかったか 彼女は、知らない。 私を包み込む細い腕は、まるで茨のように私を締め付け 一路に向けられた視線は、心に突き刺さる針のようだった。 「私もだよ、ことり」 こうして私は、この愛情が二度と表に出てこないように 彼女を害する事のないように 鍵をかけて、一生閉じ込めておくつもりだったんだ。
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