囀る小鳥は毒を知らない

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けれど、状況は変わった。 「ことり以外の女と寝たんだよ? 最低。ねぇ、ことりもダメな男だって気付いてるんでしょ? 今までだって、ことりに手を上げることもあったでしょ?」 「でっ……でも……」 「私はそんなことしない。だって、女だから。浮気もしない。一途な愛情だけをことりに捧げる」 彼女は涙をたっぷり溜めた瞳で、私を見上げる。 抱き締めたその身体からは、震えが小さく伝わってくる。 「だからことり、私を好きになって」 「あずちゃ……」 彼女が今流している涙は、あの男のためのモノではない。 私が今、彼女を苦しめて、泣かせているんだ。 「ねぇ、ことりは私のこと、嫌い?」 ……知ってるよ。 こんな事を言われたら、優しい貴女は私を拒否なんか出来なくなって また、泣いてしまうんだ。 「嫌いなわけない! でもっ……」 だけどね、ヒドイ私は 私のために苦しんで、私のために泣く貴女のことが 可愛くて、愛しくて、仕方がないの。
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