囀る小鳥は毒を知らない

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「今すぐ好きになれなんて言わない。私は何年でも待てる。だからことり、私と一緒に居よう」 私はことりの全てを知っている。 私の存在に、彼女がどれだけ救われてきたのかも、知っている。 私に嫌われたくないという事も、知っている。 「あずちゃん……」 けれど彼女は、私の事を知らない。 私がどれだけ彼女の事を愛しているのかも。 抑えきれなくなった愛情が、強い欲望に変わっていたという事も。 愛情の箍を外したのは、紛れも無く私自身だって事も。 彼女を手に入れるためなら、私はなんだってする。 時には男を騙す、女狐になる事も厭わない。 それが例え、彼女を一時(ひととき)を苦しめる行為だったとしても。 汚い外の空気に触れさせないためなら、私は道徳だって捨てられる。 私の身体は汚れても、彼女に対する愛情だけは、一生綺麗なままだから。 ねぇ、だからお願い。 貴女は何も知らないまま 私という鳥かごの中で、泣いて。 ――ことり。
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