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「小娘、今日はいつなんだ?」
「んむ?いつって、変な質問ね。今日は平成○○年3月――」
「あー、違う違う。年号なんぞ変わり過ぎて覚えてない。西暦で、だ」
「西暦なら、20××年3月4日よ。ちなみに、昨日はあたしの18歳の誕生日だったのよ」
「なんだ、たったの3日しか寝てなかったのか……」
「ちょっと、昨日誕生日だったって言ったでしょ!あたしに何か言うことはないの?お決まりの、あっ」
ガッシャーンッ!!
彼女が声を荒げた瞬間、彼女が持っていた湯呑みが落ちて割れ、飛び散った破片が俺の頬を掠めた。
「あ……ご、ごめん。ほっぺたが切れちゃってるけど、大丈――」
「18年なんて、俺にとっては一瞬に等しい。俺を長命の鬼だとわかっているのなら、それなりの態度で口の聞き方に気をつけるんだな」
俺は目を細めてそう冷たく吐き捨てる。あっという間に塞がっていく傷口を見た彼女は、一瞬目を見開いて口を閉ざした。
もう今更、俺が鬼だということを隠す必要もないだろう。第一、この頑固な小娘はこれ以上考えを曲げようとしないのだからな。
人間なんかに俺のことをどう思われようと、俺は気にしない。今までだって、ずっとそうやって暮らしてきた。
彼女の肩を支えながらもう片方の手で割れた湯呑みの破片を集めていると、ジッとこちらの様子を窺っているような気配を感じた。
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