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「あたし、死にかけたことが4回あるの。最初は2年前の冬。家族で温泉に行った帰り、路面凍結のせいで車がスリップして玉突き事故。後部座席にいたあたしとお姉ちゃんは助かったけど、両親は即死だったわ」
両親が目の前で事故死。サラッと言ってのけるな。真剣だが、表情はリラックスしているように見える。
だが、俺達に目を合わそうとしないで、口元に笑みを浮かべて遠くを見つめるのは。手が小さく震えているのは、本当の思いを隠しきれていない。
悪いが、俺にも、それからこのキツネにもバレバレだ。キツネはバカっぽく見えて――実際にもバカだが――鋭いからな。
逆に青ざめて女みたいに口に手を当てて話を聞いているキツネを横目に、俺は眠ってしまわないように足を抓りながら話の先を促した。
神那が2回目に死にかけたのは、彼女が両親を失った年の末。彼女の姉と同じクラスの親友と3人で新年を迎えようと鍋パーティを楽しんでいたが、隣の家からの家事に巻き込まれてしまった。
冬場の乾燥していた空気で火の回りが早く、その上隣りから火が移っているのになかなか気づけなかった3人は煙に襲われた。
パニックになった神那はそこで大量の煙を吸い込んで意識を失ってしまったらしいが、多少火傷を負っただけでちゃんと生きている。
神那が目を覚ましたのは病院のベッドの上。姉と親友がどうなったのか看護師に聞くと、親友は足に酷い火傷を負ったものの生きているらしい。
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