死神の神那

4/15
前へ
/237ページ
次へ
 いわゆる海デートということらしいが、俺には関係ないし興味もない。海と言えば漁場というイメージしかないな。  昔はよく、アイツと釣り勝負をしたもんだ。まぁ、釣り糸を垂らせばすぐに俺は眠ってしまうから、いつもアイツが勝っていたんだけどな。  あぁ、あの頃は楽し――いや、今は昔を思い出している場合じゃなかったな。  2人はごく普通のカップルのようにビーチで遊び、一緒に海に入ってたくさん泳いだ。泳ぎすぎて途中で足をつって溺れかけた神那を彼氏が助け、砂浜まで彼女を抱えていた時だった。  突然、彼氏は神那を砂浜に投げ出すようにして倒れた。そしてそのまま彼氏は、2度と目を覚ますことはなかった。  原因は、彼の足に絡みついていた毒クラゲ。  その海水浴場ではクラゲが入って来れないように目の細かいネットが沖に張られていたのだが、なぜかその時だけはどこからか毒クラゲが遊泳ゾーンに入ってきてしまったらしい。  幸い死傷者は他に出なかったものの、また神那は身近な人を目の前で失うことになった。  この頃から神那は周りから“死神の神那”と呼ばれるようになり、そして身の回りから徐々に人が遠退いていった。  登下校を共にしたり昼飯を一緒に食べ過ごしていた親友、同じ教室で学ぶクラスメイト、勉学を教えてくれていた先生、1人暮らしでは何かと大変だろうとよく世話をしてくれた近所の人達。  神那を知る人達の、神那を見る目が変わっていった。
/237ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加