38人が本棚に入れています
本棚に追加
次々と身近な人を亡くした神那のことを、心を理解できないわけではない。ただ、近づけば次は自分が死ぬかもしれない。皆はそう思っていたに違いない。
神那が殺したわけでもないのに。何が理由でそうなったのかも、全く何もわからないのに。自分の身が可愛い愚かな人間どもだ。
完全な孤立。1人っきりになってしまった神那からこれ以上奪えるとすれば、あとは彼女の命。
あともう少しで高校を卒業ということもあってなんとか学校には通っているが、1人暮らしで借りていたアパートは噂が広まってから追い出された。その代わり、今は大家に紹介された古い空家に住んでいるらしい。
神那のせいではないのに次々と人が死んでいく。噂のせいで誰かを頼ることもできない。このままでは、この生まれ育った故郷で生きていけなくなってしまう。
画家になるという夢のためにも、生きていくためにも、早く高校を卒業して噂の広まってない県外の美大へ行く。
その目標を達成させるため、この町にいる卒業までの間、何としてでも俺に自分を守ってほしい。次に死ぬのは、きっと自分だから。
彼女はそう言いきって一息つくと、新しく入れた水を一気に飲み干した。
正体不明のものからこの生意気な小娘を、それも1週間も守れだと?難しくはないが、面倒くさい。ただただ、面倒くさくて呆れるが。これは、放ってはおけないな。
最初のコメントを投稿しよう!