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「す、すごい波乱万丈じゃ……」
「待て。さっき小娘は4回死にかけたと言ったよな?今までの話だと、3回しか死にかけてない。あとの1回はどうした?」
3回目の毒クラゲについては“神那が死にかけたこと”にカウントしていいのかすら怪しかったが、まぁ細かいことはいいか。考えるのも面倒臭いしな。
「4回目は、ついこの前よ。いつも通学で使ってるバスが、このご時世でバスジャックされたの。パニックで逃げようとした人は覆面の男に銃で撃ち殺されたわ」
「その事件なら僕もテレビのニュースで見たのじゃ。犯人は最初から無理心中するつもりで、バスの乗客を道連れに崖からバスごと飛び降りようとしたんじゃよな?」
「アホなことを考える者もいるんだな。死にたければ1人で勝手に死ねばいいのに……」
「犯人と一緒にいて思ったんだけど、きっと本心では誰かに止めてほしかったんだと思うわ。顔は見えなかったけど、なんだか寂しそうだったもの」
「あんな怖い事件に巻き込まれて、よく無事に生きて帰れたな?僕なら恐怖でチビっちゃう――」
「4回も死にかけたのに小娘だけが生きているのも不思議だが、2年間で4回も死にかける方が怪しい。これはもう、誰かに相当恨まれているとしか考えようがないな」
「それはないよ旦那!」
人間の恨みほど恐ろしいものはないぞ?と、俺が大欠伸をした時だった。気の弱いキツネが、珍しくはっきりと大きな声を上げた。
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