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こいつがこの俺の前で自分の主張を大声で言うなんて、1年に1度もあるかないかというくらい珍しい。あぁ、俺は丸1年ぶっ通しで寝ることもあるから、もっと頻度は低いか。
とにかく、キツネは俺の世話係で、パシリで、俺に逆らうことのできない下僕なのだから、俺に対して態度を大きくするなんて滅多に見られるものではない。
否。俺が許さない。あとでたっぷり灸をすえてやるゆえ、覚悟しておけよ?
「神那ちゃんは優しい子じゃ!この時代にしてはしっかりした子じゃし、強靭的な強い心を持ってる。誰かに恨まれるようなことなんて何もしてないよ!」
「キツネ君……」
「ほーぉ、ずいぶんと自信ありげだな?家族でもないのに、まるでずっと小娘を見てきたみたいだ」
「うっ……」
「そういえばお前、普段は人間の家に勝手に住んでいるんだったよなぁ?今住んでいる所が気に入ったって言っていたよなぁ?」
「うぅっ!?」
「キ、キツネ君……?」
キツネは人間が大好きだ。少しでも人間のそばにいたいからと、人間の町で暮らしている。独り身で自分の家を持っているわけでも、アパートを借りているわけでもない。
こいつは、家の屋根裏や使われていない物置きなんかに入り込んで居候している。そして、バレる前に出て色々な人間の家を転々としているんだ。
「白状しろ、キツネ。お前、小娘の家――どうせ屋根裏にでも――住んでいるんだろう?」
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