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このまま素直に帰ってはくれなさそうだし、小娘も吐き出してしまえば満足していうことを聞いてくれるだろう。ちょっと、顔や腹が痛むんだが……
「仮に俺が本物の鬼だったとして。どうしてそんなにも人外の鬼にこだわる?喰われるかもしれないと、怖くはないのか?小娘が俺に何の用だ?」
「あたし、逃げ足には自信があるから。目的は1つだけよ。あたしの守護神になって、あたしを守って頂戴」
「………………帰れ。そして2度と来るな。俺は神様なんかじゃない」
狂っている。どう見ても怠惰な人間の俺を鬼呼ばわりして、散々暴力を振るった小娘は精神を病んでいるに違いない。そうでなければ、そんなバカげたことを言えるはずがない。
守護神だと?この小娘は俺を文字通り叩き起こしただけでは飽き足らず、さらに俺に働けと言うのか。仕事なんて面倒臭い。面倒なのは嫌いだ。よし、やっぱり寝よう。
俺はまっすぐ見つめてくる彼女に背を向け、ボロボロの薄い布団の中にスッポリと潜り込む。
どうせすぐにまた「寝るなー!」とかキーキー叫んで何かしらの攻撃が繰り出されるだろうと身構えたが、何もない。
「もう帰れない。帰る場所なんて、あたしにはないの。アンタが引き受けてくれるって言うまで、あたしはずっとここにいるんだから」
返ってきた言葉はさっきとは真逆。とても静かで、とても落ち着いた声だった。とても、ついさっきまで俺を叩いたり蹴ったり耳を引っ張ったりしていたとは思えないくらいだな。
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