朝霧神那、襲来

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 一体なぜ、こんな若い小娘が1人で本物の鬼を信じてやってきたのか。絶望しきってこんなことをしたのか。それにしては、声も眼光も力を感じる。  あと、暴力的な力もかなり。俺が“普通”のやつじゃなくて良かったな?人間の大人の男なら、警察に通報しているぞ。  俺も有名になったもんだ。この山小屋のようなボロ家からほとんど外に出ることもなく、いつも寝てばかりいる。人間と出会うこともなくなったというのに。  この山に住み着いている鬼がいる、という噂を信じて来たなんて。そう、俺は正真正銘、本物の鬼だ。  だが、人間達が勝手に想像するような悪い鬼じゃない。むしろ、人間と関わりたくない。だから俺自身の姿もこのボロ家も人目に触れないようにしていたのに。  拍子抜けした俺は背を向けたまま「勝手にしろ」と呟くと、目を閉じた。  眠ってやる。ぐっすり眠って、小娘に暴れ馬の如く叩き起こされる直前まで見ていた夢の続きを見てやるんだ。ウトウト……  あぁでも、俺が眠っている間に家の中を荒らされたらたまったもんじゃないな。常識はわきまえているだろうが、怒ると何をするかわからないからな。 「絶対、諦めないんだから」  小さな小さな、しかし力強い声を、俺は背中で聞いた。背中で彼女の気配を感じながら、俺と彼女との我慢比べが始まった。  その日。彼女は宣言通り1歩もその場を動くことなく居座り続けた。
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