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さすがに布団をはねのけて振り返ると、彼女は何かを握りしめたまま倒れていた。これは、写真か?
2枚あるうち、1枚は家族で撮った集合写真らしい。彼女と彼女の両親らしき男女、それから姉らしき女性も写っていて、皆満面の笑みを浮かべていた。
もう1枚の写真に写っているのは、彼女と誰かとのツーショット。同い年くらいの若い男と一緒に、背景が遊園地ということは、さしずめ彼氏か。
「はぁ、仕方ない……」
写真を握らせたまま彼女を抱き上げると、ついさっきまで俺が寝ていた薄い布団の上にソッと寝かせる。
それから大きな瓶から水を汲み、戸棚から笹の葉の包みを2つ取り出すと彼女の元へと戻って彼女の頬をペチペチと軽く叩いた。
「起きろ。俺の負けだ、認める。だから飲んで食え」
俺の呼びかけにうっすら目を開けた彼女はかろうじて意識を手放してはいないようだが、すっかり衰弱しきっている。
これはもう執念だな。もしも俺が完全に眠ってしまったら、こいつはずっと我慢したままだったのか?倒れても、俺は眠ってしまったら気付かないというのに。
命がけだな。命を守ってほしいのに、その命を懸けてでも俺の首を縦に振らせたいか。俺はこの小娘を、甘く見ていたな。
「あ、りがと……」
「後でちゃんと話を聞いてやるから、今はゆっくり回復に努めろ」
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