朝霧神那、襲来

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 俺が彼女の上半身を抱え上げて背中を支えてやると、彼女は湯呑みを手に少しずつ、チビチビと冷たい水を飲み始めた。  そして水を半分と少し飲むと、今度は笹の葉の包みをほどき中身を取り出してソレをシゲシゲと眺める。 「これ、何?」 「鹿の肉を干したもの。少々硬いが、味がいいし結構長持ちする保存食だ」  色や形の悪いビーフジャーキーのような茶色い塊を、俺も1つつまんで少しかじってみせる。  俺は人間ほど頻繁に食事をとらなくても生きていける。というより、それほど腹も減らない。気が向いたら食うくらい。その気が向いたら食うのが、保存食。  すると彼女も、俺の真似をして恐る恐る肉にかじりつき、噛みちぎろうと引っ張って引っ張って…… 「ん、んぐぐぐぐ……っ!」  たっぷり時間をかけてようやくブチンッと噛みちぎり、モグモグと噛み締める。どうだ、美味いか?それにしても。 「近頃の若者は顎の力が弱いな。歯は折れてないか?」 「んうぅ。味は美味しいけど、硬すぎ!こんなんじゃ食欲がなくなっちゃうわよ!」 「贅沢をいうな。昔はこの肉すら食べられぬ人間もいたんだぞ?」 「いつの話よ!?」 「何、ほんの数百年ほど昔の話だ。そうだな。どうしても食えないというのなら、こっちを食ってみろ」 「なぁに?」
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