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呆れたようにフッと笑うと。
「嫌味だな。
モテるからって、その発言は反感買うぞ」
そういうお前はだってフッと鼻で笑って、余裕な顔して。
ふと向けた視線の先には、こいつの彼女。
彼女を見つけて急に緩んだ顔は、ムカつくくらい優しくて。
なんか羨ましい。
彼女の近くには比奈の姿。
人懐っこいその性格で、もう仲良くなってるその光景は微笑ましくて。
そんな比奈を見て、俺までだらしなく揺るんだ口許を慌てて引き締める。
慌てたところで、時すでに遅し。
「おい。絶対に手を出すなよ?」
何を勘違いしたのか、真顔で俺に迫るこいつに頬がピクピクと引きつって。
「あほ。ダチの女には手は出さねえよ」
いや、他の女にも興味なんてこれっぽっちもないけど…
俺が興味あるのは…なんて、恥ずかしくて言えるわけもなくて。
「ほら行くぞ」
そう言って先に歩いていくことで、この複雑な表情を隠す。
目の前には比奈の姿。
……この1年、楽しくなりそうだ。
そう思うとさっき引き締めたはずの口許が、知らず知らずのうちにまただらしなく緩んでいた。
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