Ⅱ.恋の味…?

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同じ教室にいて。 一緒に授業を受けて。 いつでも、俺の耳には楽しそうな比奈の声が聞こえてきた。 無意識に探さなくても、一番後ろの席だった俺の視界には比奈の姿をとらえることができたんだ。 4月の終わりごろ。 いまだに話しかけることすらできない自分が情けなくなってきていたころ。 休み時間のたびの、いつも友だちと一緒にいる彼女だったのに。 今日は珍しく机のところに一人ポツンと座ってる時があった。 なんとなく近くを通って、気づかれないようにチラッと盗み見。 そのときに彼女の机の上にある苺のパッケージが目に入った。 ――…苺ミルク。 あの日のことが。 あの日の比奈の少しはにかんだ笑顔が。 一瞬で鮮明に思い出される。
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