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そして、話は冒頭に戻る。
何度目かになる奴らの追跡を強引に払いのけ、篤は廃墟から見える月を眺める。
特に理由はない。
ただ、ふと見たくなったから、そんなことをしたのだ。
しばらくして、視線を前に戻す。そして、ここだと雨晒しになるから別の廃墟を見つけ、休もうと思った。
その時だ。
「あらあら。お散歩してたら凄い場面に出会しちゃったわ~」
「……!」
突然、背後から女性の声がした。
篤は驚き、振り返った。
彼の後ろには壁しかなかったはずなのだ。
確かにこの廃墟は所々穴だらけだが、ここは三階だ。
しかも、入り口は一つしかなく、誰かが入ってくれば気付くはず。
なのに、この女性はいきなり現れたのだ。
まるで、幽霊か何かのように。
そして、女性の言葉にも疑問がある。
ここは人が住んでる場所からはかなり離れた所にあるのだ。
もちろん、付近に家はない。
しかも真夜中だ。
こんな時間にこんな場所まで散歩など、いくら何でも有り得ない。
彼は、女性に得体のしれない恐怖を感じ、身構えた。
今まで感じたことのないモノを女性から感じ、冷や汗が流れている。
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