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「……やられた……!」
切れ目の中で、篤は悔しそうに呟いた。
あの時、冷静さを失わなければ、捕まることはなかった。よく状況を見れば、逃げ切れることもできたはずなのだ。
後悔した。しかし、彼がいくらそう思おうと、現実は変えられない。
目が大量にある空間を、なすすべもなく漂うことしかできない。
「……俺はどうなるんだ?」
不意に、不安そうに呟いた。
さっきから漂っているが、出口のようなものは見当たらない。
もしかしたら、このまま一生出られないかもしれないのだ。
そんな不安を持ち、漂い続ける。
……しかし、その不安は、一瞬で無くなった。
「……!?」
突然、空間から落ちたのだ。
それにともない、辺りの風景も変わった。
目だらけの空間から、青空が広がる空間へ。
彼はあまりの変化に戸惑い、周りを見渡した。
下には森があった。
どうやら浮いているようで、膜はまだ張ってあるようだ。
「……ふぅ」
何が起きたのか理解できなかったが、とりあえず空間から出られたことに安堵し、息をもらす。
そして、一度降りて、落ち着いてさっき起きたことを考えようと、森に向かって高度を下げていった。
……ちなみに、彼は空間に数分入っていたと思っているが、青空が広がっているということは少なくとも数時間は経っていることになる。
それについては、彼は疑問に思わなかったようだ。
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