入【げんそうきょう】

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「……よっと」 落ち葉が覆っている地面に着地し、膜から出る。 その瞬間、空気の悪さを感じて篤は顔をしかめる。 そこら中にキノコや苔が生えていて、原生林のような印象を抱かせる雰囲気がする場所だ。 彼が着地した地点は比較的木があまり生えていなかったが、そこ以外は木や枝で空が見えないほど覆われている。 「……ここはどこだ?」 見たことない景色に、辺りを見渡していた彼が呟く。 周りには人がいないから、誰も答えないだろう。 ……彼はそう思って独り言をしたが。 「ここは魔法の森よ。立川篤くん」 「……!!」 突然、彼にとって聞き覚えのある声が背後からした。思わず振り向く。 「ふふふ」 そこには、彼を廃墟からここにほぼ強制的に連れてきた女性が、笑みを浮かべながら立っていた。 「……お前!」 女性を見た瞬間、彼は敵意を剥き出しにし、膜を何個も空間に出現させて投げつけた。 これは黒服から逃げるために編み出した技で、本来なら集団で襲いかかってきた奴らを膜の中に入ながら一斉攻撃するモノだ。 一人に対して使ったことはないが、集団に有効だから効くだろう。 「あらあら。いきなり攻撃するなんてやんちゃね」 ……しかし、膜が女性に当たることはなかった。 急に空間に切れ目が入り、全て膜を飲み込まれてしまったのだ。 「……な……!」 目の前で起こったことに驚愕する篤。 「あら。このぐらいで驚いてたら、ここ幻想郷では生きていけないわよ?」 と、不意に背後から声がした。 すぐ後に、首に何かが当たる感触がする。 「……!」 少しでも動くなら殺される。 そんな気配がし、一気に身体が硬直した。 「ふふふ。さて、あなたは負けたから、私の言うことを聞いてもらうわよ。あ。ちなみに、拒否したらどうなるか、あなたは賢いから分かるわよね?」 「……分かった。聞こう」 女性からは殺気が感じられないが、それが逆に彼の恐怖を掻き立てる。 ここは従ったほうがいい。 そう彼は考え、返事をした。 「ふふふ。素直な子は好きよ。じゃあ、話すわね」 女性は満足そうに言い、話し始めた。
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