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「……何なんだお前ら」
その恐怖を何とか抑え込み、それだけを言う。
気を抜けば身体が震えてくる。彼は、今までやったことがないほど気を張っていた。
「……」
一方、その原因を作っている奴らは、ただ無言で篤を見ていた。
そして。
「……!」
ただ無言に。
パァン!
……一人の男が拳銃を取り出し、篤に向けて撃ってきた。
彼は間一髪で銃弾をかわす。
もちろん、そんな物を避ける身体能力など持ち合わせていない。
偶然避けたら、たまたま当たらなかっただけだ。
ザワ……ザワ……。
しかし、彼が避けたことにより、奴らは動揺していた。
確実に当てられると考えた距離で外れるとは予想もしていなかったらしく、さっきまで感情が感じられなかった表情に、明らかに驚きや戸惑いが表れていた。
その隙を見逃さず。
「……ウオォォォラァアアァァァァ!!」
怒声を上げながら、たまたま近くにあったゴミ箱を奴らに投げ、突進した。
思わず撃ってきた男がいるところを目掛けたが、背後には全く集中していなかった。相手に殺意があれば、その隙に撃たれても不思議ではない。
しかし、何も起こらず、篤は奴らから逃げ切ることができた。
殺意が無かったか、突然の行動に咄嗟に反応出来ないほど間抜けだったのか知らないが、取り敢えずその場からは脱出できた。
事情は分からないが、ひとまずあの異様な雰囲気から解放されたことにホッとし、息を吐く。
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