逃【そとのせかい】

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不意に、彼はある事実に気付いた。 この膜があれば、散々追いかけてきた奴らに復讐することができるのだ。 更に、追ってこられても抵抗でき、心に余裕が生まれる。 そう考え、篤は早速実行に移そうとした。 天井を見上げる。 残念ながら、さすがにもう奴らは見えなかった。 が、よく聞いてみると、複数の足音がした。 それらは、彼の方に近付いてくる。 「……来たか」 ついさっきまで恐怖の対象でしかなかった奴らの気配。 しかし、今の彼には、警戒も無しに近付く獲物そのものに感じられた。 心境の変化に、思わず笑みを浮かべる。 やがて、奴らがドアを蹴破り、彼が落ちた部屋に入ってきた。 さすがの奴らも、目の当たりにした彼の力を警戒してか、銃を構え、その場から動かないでいた。 試しに、彼は奴らの方へ歩いていく。 その歩みに合わせ、奴らは後ろに下がっていく。 「……ふん」 その様子に、可笑しそうに鼻で笑い。 「……ウラァ!!」 膜を張ったまま、奴らに向かっていった。
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