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二人が斜め奥のベッドへと向かい――盗撮は犯罪です。わたしがズームすると、早速二人がキスし始めた。こうして今日もわたしのあなたが押し倒され、わたしのあなたが汚されていく――盗聴は犯罪です。淫靡な嬌声にしくしくと泣く、そんなわたしはあらいやね淫ら。槍さえあればと歯噛みして、やっぱり醜いものはいらないわ。大体あんなものぶら下げてどうやって生きていけばいいの? 確かに肉欲は問題よ。だから二人で隠し合うのよ。
そしてそれは、あなたと一緒に達し、そろそろ爪切らなきゃと考えた時のこと。
『――ども、でき』
『――えっ!』
「えっ……!」
陰惨なノイズ、ボリュームアップ。
『産むことにしたわ。いいでしょ?』
『それは、いいけど……。瑠璃には? 瑠璃にはなんて説明するの?』
『瑠璃も話せばきっとわかってくれるわ』
『そうかなあ、瑠璃はきっとダメな気がするよ? だって瑠璃、僕のこと愛してるし。今日だってこの美しい顔を見ながら××してた。僕にはそれがわかるんだよね』
『そうね。確かにあの子にはちょっとおかしいところがある。でもあなたはちょっとどころでは済まないわ。ううん、恐らくはわたしも。さあ、そうと決まったら会う前に全部出しちゃいなさい。空っぽになるまで、ね?』
『……少しくらいは残しておきたいな。今日辺りしてやったら絶対に喜ぶと思うんだよね。そりゃ最初は嫌がるかもだけどさ、そんなの全部照れ隠しだし。それに瑠璃だって子供じゃないよ、なのになんで……』
『ダメよ。瑠璃はまだ子供。そんなことしたらわたし絶対に許さないわ。早くしなさい』
『わあ、下に恐ろしきは女の嫉妬。哀れなる王子。魔女に謀られ蜜壷へ。薔薇の短剣はさあいずこ。……』
こうしてまたも交わる獣。わたしはわなわなと震え、あなたと同じ気持ちだわ。これこそ涙はチョチョ切れ、頭はブチギレだわ亡国の詩人。いいわ、見てらっしゃいなオイディプス。わたし、やるわ。とびっきり気持ちいいことしてあげるわ。
「よし」
そうと決まればパソコンを消し、わたしは一度鏡の前に立って髪を梳く。余りにも美しいわたし。これだけで何でも許される気がする。颯爽と扉を開けて部屋を出た。
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