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早速わたしの手を離してあなたへとかしずくように寄り添い、身振り手振りを交えて説明する。
「ねえ聞いて! やっぱり瑠璃、僕のこと好きだった。死ぬほど愛してるんだってさ。だからこれからは三人でしようよ。ああ、魔女だからって僕邪険にはしないよ。僕は選ばれし勇者だから」
「そう、よかったわね」とあなたが微笑んでオイディプスの頬を撫でる。そしてわたしはそっとオイディプスの後ろに立つ。オイディプスが尚も嬉々としてあなたへと提案する。
「ああ、そうだ。子供も三人で育てればいいんじゃないかな? 瑠璃にもこれから沢山産んでもらってさ、舞台に沢山出てもらおう。そうしたら僕達の舞台にはもっと客が来る。それはそうだ、僕達の子供が美しくないわけがない。完全唯美式舞台が出来上がるんだよ。ねえそうしようよ、ねえ、ねえってば、かあさ――」
そして言葉は唐突に途切れた。オイディプスがハテナという顔をし、自分の背中を見る。そこにはわたしのたった今突き立ててみた包丁が刺さっている。それは綺麗な銀色の包丁。これで悪霊も退散ね。オイディプスがベッドに倒れ込み、それからゆっくりと末期の目を向けた。
「……な? ……ん? る?」
でも息はもう絶え絶え。ああ、なんて可哀想なオイディプス。でもあなたの所為なのよ? わたしはにっこりと笑んだ。
「つんつん。女だからって油断したねお兄ちゃん。女だって時には槍を持つわ。そう、わたしだって刺す。ズブズブと刺しまくるわ。だってわたしだって本当に愛してる。条件は同じなのに、許されないのは差別でしょ? わかったらお眠りなさいお兄ちゃん。もう、あなたは英雄(オイディプス)じゃない。これからは」
そしてあなたを見つめ、高らかに宣言する。
「わたしがあなたの恋人(オイディプス)になる」
ああなるほどそういうわけねという顔をして、事切れたオイディプス。全くもう、目をカッと見開いて、最後まで演技がかってるの。仕方がないから鮮血を唇に塗ってあげていると、あなたが掛けていた布団を剥いで半身を起こす。「おいでなさい、瑠璃」とお叱りの予感ながらベッドへと誘う裸体は余りにセクシー。わたしは早速目をハートマークにしながらあなたへといそいそと跨がり、首に手を回して恍惚とした。
「はあ、本当にあなたっていつも綺麗よね……。……キス、していいっ?」
「……はあ、それが瑠璃の望むことだったの?」
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